住宅の外壁塗装は、「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3回塗りをしないと、十分な性能を発揮できません。どの工程も重要ですが、とくに外壁の外観を決定づける「上塗り」については、多くの人が注目する工程といえるでしょう。
今回は、外壁塗装の「上塗り」について、塗料選びのポイントや、そして工事を進めるうえでの注意点などを解説したいと思います。
屋根・外壁塗装の「上塗り」とは
外壁塗装の上塗りとは、3回塗り工程のうち、下塗りと中塗りが完了して最後に実施する工程のことをいいます。
中塗りが完了したら、適正な乾燥時間をおき、基本的に中塗りと同じ塗料を使って塗装します。上塗りは塗装工事の仕上げであり、外観を決定づける重要な工程です。
とくに色味やツヤなどオーダー通りの仕上がりを実現できるかという点では、最も注目される工程になるでしょう。
そして、上塗りは性能面でも重要な意味を持ちます。十分な塗膜厚を確保することで耐久性を高め、さらに「遮熱」や「防カビ」などの機能を追加することも可能です。
上塗りに使う塗料の種類
上塗りに使用する塗料にはいくつかの種類があり、好みのものを選べます。
上塗りに使う塗料のおもな種類は以下の通りです。
- アクリル塗料
- ウレタン塗料
- シリコン塗料
- フッ素塗料
- 無機塗料
- ラジカル塗料
これら塗料のうち主流として最も多く採用されているのは「シリコン塗料」で、耐久性など性能面に優れるのは「フッ素塗料」や「無機塗料」になります。
また近年では、劣化しにくい塗料として広く注目を集め急速に需要を拡大させているのは「ラジカル塗料」です。
上塗りとしてどの塗料を採用するかによってパフォーマンスが大きく変わることから、大事なマイホームを長く守るためにもしっかりと検討して決定しましょう。
上塗りに使う塗料を選ぶ際のポイント
上塗りに使う塗料は、さまざまな種類のなかから住まいに合わせて決定することが重要です。どのような塗料を選ぶとよいのか、いくつかのポイントをご紹介したいと思います。
上塗りに使う塗料を選ぶ際のおもなポイントは以下の通りです。
- 耐久性を意識する
- 屋根や付帯部に使う塗料の耐久性も検討する
- 周辺環境を考慮する
- 必要な機能を検討する
耐久性を意識する
上塗りに使う塗料にはいくつかの種類があり、それぞれ耐久性が異なります。外壁塗装はいずれ必ず劣化するため、定期的に塗り替えるなどメンテナンスが必要です。
ところが、外部のメンテナンスは足場の設置が必要になることから、高額になることもあります。
つまり、塗料の耐久性が高くなるほどメンテナンスサイクルを長く設定できるため、ランニングコストを抑えられるのです。
塗料ごとの耐久年数の目安をご紹介しておきます。
- アクリル塗料:5~7年
- ウレタン塗料:8~10年
- シリコン塗料:10~15年
- フッ素塗料:15~20年
- 無機塗料:20~25年
- ラジカル塗料:12~15年
以上が耐久年数の目安ですが、耐久性が高くなるほど材料コストも高くなる傾向にあります。
導入コストを安くして短期的なコストを抑えるのか、あるいは導入コストは高くても長期的なコストを抑えたいのか、あらゆる角度から検討してみるとよいでしょう。
ただしトータルコストを考えるなら、高耐久の塗料を使うほうが有利になる可能性は高くなる傾向にあります。
屋根や付帯部に使う塗料の耐久性も検討する
外部のメンテナンスは足場を設置する必要があるため、外壁と一緒に屋根や付帯部など足場が伴う工事を一元的に管理しておくとコストの削減が可能です。
外壁と屋根や付帯部の劣化状況にギャップがあると、メンテナンスのタイミングがすれてコストにムダ生じます。
塗装業者によっては、コストを下げる意味で付帯部などの塗料のグレードを下げるケースもありますが、これはよい措置とはいえません。
外壁や屋根、付帯部など外部工事はメンテナンスのタイミングを合わせるような塗料の検討をする必要があるでしょう。
周辺環境を考慮する
周辺環境によって適した塗料も変わります。
外壁の色をガラッと変えることなどはよくありますが、周辺の景観に馴染むような色を選ぶことも重要です。
とくに雰囲気を変えたい場合などは、事前にカラーシミュレーションを活用し、いくつかのパターンで周辺環境に合わせた色を検討してみるとよいでしょう。
必要な機能を検討する
塗料には特殊な機能を付加させたものも多くあり、必要に応じて追加することが可能です。
例えば大きな道路に面している場合、外壁も汚れやすくなるため、親水性のある塗料を使えば汚れが付きにくくなります。
また池や川が近くにある場合、藻やカビが発生しやすくなるため、防藻・防カビ性のある塗料を使うと効果的です。
その他にもいろいろありますが、住まい方に適した機能を加えることを検討してみるとよいでしょう。
上塗りを行う際の注意点
外壁塗装の上塗り工程で注意しておきたいことをご紹介いたします。
おもな注意点とは以下の通りです。
- 中塗り工程との間隔はとれているか
- 十分な塗膜の厚さが確保できているか
- 完成品質に問題ないことが確認されているか
中塗り工程との間隔はとれているか
塗装工事の中塗りが終了したら、適切な乾燥時間を設けなければいけません。
乾燥が十分でない状態で上塗りが行われると、うまく密着できない部分もありムラや早期の剥がれなど不具合の原因にもなります。
乾燥時間は塗料によって異なりますが、3~4時間以上になっていることが多くのケースです。中塗りと上塗りの工程が別の日になっている場合は問題ありませんが、同じ日に組まれている場合は注意が必要です。
事前に確認しておいたり、あるいは現場を見学したりするなど、チェックすることもポイントになるでしょう。
十分な塗膜の厚さが確保できているか
塗膜の厚さは耐久性に大きく関係します。
適正な塗膜の厚さが確保できているかは、塗料ごとに設定されている「規定塗布量」をチェックすることでわかります。「規定塗布量」とは1㎡あたりに塗装する適正な量のことで、各メーカーによって設定されているものです。
塗装面積と「規定塗布量」をかけ合わせると、必要とする塗料の量が算出できます。そして必要とする塗料の量が実際に使用されているなら、塗膜に厚さが確保されていると判断できます。
もし使用された塗料が少ない場合は、十分な耐久性が発揮できないかもしれません。
完成品質に問題ないことが確認されているか
外壁塗装の3回塗りが完了したら、完成品質に問題はないか責任者による検査が行われ、合格をもって足場の解体をする必要があります。
塗り漏れや色ムラ、養生残りなどはないか、もし問題があれば手直しが行われているなどが重要なポイントになります。
とくに足場がないと施工できない工事でもあるため、品質に問題がないことが確認されて引き渡しが行われないといけません。
上塗り塗料は業者と相談して決めよう
上塗り塗料は専門業者と相談しながら決定することが重要です。というのも、塗料と外壁材の相性や、環境に適しているかなどさまざまな要素から判断する必要があるためです。
例えば、耐久性が高いフッ素塗料や無機塗料などは、塗膜が硬いため動きが大きいモルタル下地などには適しません。動きの大きな下地には弾性タイプがよいですが、一方で最も普及している外壁材の窯業サイディングには弾性タイプは適しません。
以上のように、経験と知識が豊富な塗装業者は、下地との相性や塗料の特性などさまざまなノウハウの蓄積があります。
また、初めて依頼する塗装業者であれば、やり取りのなかで信頼できる業者であるか見極める作業にもなります。外壁塗装は、定期的な点検やメンテナンスが必要になるため、長い付き合いになる可能性があるのです。
アフターサービスを含め、これから長期的な関係を構築できる業者なのかしっかりと見極めてから依頼するようにしましょう。
まとめ
外壁塗装の上塗りは、見栄えを決定する重要な工程です。適切な品質を確保するためにも、正しい施工が行われていることを厳しく確認する必要があります。
また塗料には、コストや性能が異なる多くの種類があり、さらにさまざまな機能を追加することも可能です。
信頼できる塗装業者に相談しながら、住まいに適した塗料を選ぶようにしましょう。